06 花街の芸をまもる店「藤むら」


夜になると軒灯に照らされ、独特の雰囲気を醸し出す「藤むら」。以前は「いろは」というスナックだったそうですが、バーカウンターに畳の座敷というその独自な内装をそのままに、今は4人のみとなった円山町の芸者さんの一人、鈴子さんが経営者となって2011年に始めたお店です。着物姿の芸者さんが踊りを披露してくれるサービスもあり「芸者さんに会える店」としても知られています。

夜のお店が始まる前、この「藤むら」は、このまちの芸者さんたちの稽古場となっています。芸事の好きな旦那衆も、88歳で現役の芸者さんでもある小糸姐さんにこの店で、小唄や三味線の稽古を付けてもらっています。18歳のころからこの円山町で、芸者さんとして働いてきた鈴子さんは、「花街芸の楽しみかたも時代と共に変わってきた。今の人は新鮮な興味をもって和芸を観ている」と語ります。芸者としての道を貫いてきた小糸姐さんと鈴子さんは、今もなお日々の稽古を欠かしません。




「吉原」を「藤村」に変えて唄っているところから、伝統芸能の継承とは単なる「保存」ではないこと、花街の文化がここでは今なお生きていることがよく分かります。
ガイド目次

01 神泉駅
02 カフェ・ド・ラ・フォンテーヌ
03 弘法湯石碑
04 金井青果
05 芸者階段
06 藤むら
07 裏渋谷通り
08 道玄坂地蔵
09 二つの料亭
10 ホテル街
11 国際的クラブWOMB
12 複合型ライブハウスShibuya O−Group
13 ミニシアター「ユーロスペース」
14 円山児童遊園地
15 国際文化理容美容専門学校
16 まちの元お米屋さん「円神米店」


「音で辿る円山町」は、青山学院大学総合文化政策学部鳥越研究室が2017年に企画編集した円山町を歩くためのガイドブックの内容を「音で辿る」ためのページです。「音」は徐々に増えていく予定ですのでお楽しみに!

まちミュージアムガイドブック東京都渋谷区神泉編
「渋谷の元」をさがして 古くて新しい神泉円山町を 歩くためのガイドブック
編集・執筆・イラスト:青山学院大学総合文化政策学部鳥越研究室
制作協力:つなぐNPO、渋谷区郷土写真保存会
発行:ACL青山コミュニティラボ(東京都渋谷区神宮前5-47-11青山学院アスタジオ2階)